社会に出て仕事をし始めると学生時代には意識しなかった税金と触れ合う必要が出てきます。義務教育の間ではまったく教えてくれません。
仕事をされている方の大多数が会社勤めをしているサラリーマンだと思いますが、会社勤めであれば会社が代行して必要な税金を支払う手続きをしてくれますが、自営業やフリーランスの場合は基本的には自分ですべての手続きを実施する必要があります。サラリーマンであったとしても、最低限知っておいた方がいい税金の知識があります。将来的に独立して、非サラリーマンになった時にも役に立ちます。
人は必ずどこかで税金について学ぶ必要があるタイミングがくると私は思っています。税金についての正しい知識を身につけて、世の中をうまく生きていきたいものです。
ここではサラリーマンが最低限知っておくべき税金についてご紹介します。
源泉徴収
会社が毎月の給料から税金を天引きして、会社が代理で納税する制度です。サラリーマンで会社勤めであれば、手続き不要で意識することなく必要な税金を納めることができる仕組みになっています。
ただ、給料明細を見る時に手取りの収入(税金などの費用天引き後)金額に目がいき、天引きされている内容の詳細をあまり理解してない場合が多いという実態があります。なぜなら義務教育期間および、専門学校、大学でも税教育の授業はありません。社会人になるまで、また社会人になってからも税教育は自分で自発的に学ばないと知識を身につけられるタイミングがありません。
そして実際のところ、ほとんどの方は税金について興味がないと思います。それでも納税漏れなどがないのは、この源泉徴収の制度によって会社が代わりに税金を納めてくれているからなのです。
逆に自営業やフリーランス、副業をしており会社以外で稼いでいる場合は自分で納税の手続きする必要があります。いままで税金について学ぶ場がないまま、いきなり必要に迫られて税知識を学んでも、複雑なため苦戦する人が散見されます。
注意ポイント
国としては、税金が必要でいろいろなところで税金が使われています。税金を効率的に納めさせるために、サラリーマンには税知識がなくても自動的に納税できるように「源泉徴収制度」が設けられています。こういったことから、国が学生時代に税教育をうける環境を意図的に提供していないといった考え方をされる方もいるほどです。税知識がなくても気づかないうちに自動的に会社経由で納税されるようになっているからです。
なんの疑問も持たないまま税金対策など知らずに過ごしていると、どこかで大きく損をする可能性があります。教えてくれる環境がないのであれば、自ら動き学ぶ努力が必要になってきます。
源泉徴収で天引きされている内容
- 所得税
- 住民税
- 健康保険・厚生年金保険
- 雇用保険
源泉徴収の金額(一例)
■月収:300,000円(独身 30歳)
・所得税:7,000円
・住民税:15,000円
・厚生年金保険:45,000円
・雇用保険:1,000円
手取り:232,000円(-68,000円:源泉徴収)
※住んでいる場所や状況により異なりますので、目安としてお考え下さい。
所得税
所得税とは、収入から所得控除を引いた金額に所定の税率で課される税金です。所得税は、本来従業員が税務署に支払うものですが、サラリーマンの場合は、給料から天引き(源泉徴収)して会社が代行して税務署にまとめて納税をしています。
ただ、毎月の納付では概算金額(ざっくりとした金額)なので、12月の「年末調整」で、その帳尻合わせをして清算を行っています。
住民税
住民税は、「市町村民税」や「道府県民税」の総称で地方自治体による教育や福祉、行政サービスの資金のために徴収されます。住んでいる地域と収入により、金額が異なります。また、前年の所得に対して翌年の納税額が決定されます。
所得税と同様に、課税所得に税率をかけて算出されますが、納税時期が当年ではなく翌年である点が大きな違いです。
そのため、前年と今年の収入に大きな差が出る場合は、今年の収入と比較した場合に住民税が額が大きすぎる事態になる可能性があります。
もっと詳しく
例)プロ野球選手など
■前年:年収1億
■今年:(引退)一般的な収入
⇒前年(年収1億)の年収に対して住民税が発生
健康保険・厚生年金保険
源泉徴収の中で金額の大部分を占める部分です。おおよそ月収の15%程度が一般的です。
健康保険
被保険者が病気や怪我をなどで医療機関を受診する際に、受診料を一定の負担割合(一般的には3割)で受けることができる医療保険です。
一般的に、会社として加入するものを「社会保険」、自営業やフリーランスなど個人として加入するものを「国民健康保険」と呼びます。
※健康保険料(社会保険料)が毎月給与から天引きされます。
厚生年金保険
国民年金に上乗せされて給付される年金です。基礎年金となっている国民年金の金額に、厚生年金保険の受給額が加算され、合計金額をもらうことができる年金制度です。
毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率をかけて計算され、事業主と被保険者とが半分ずつ負担することになります。
厚生年金:国民年金に加算される形で会社に勤める人が加入する年金
まとめ
自営業者、フリーランス:国民年金のみ
会社員:国民年金+厚生年金
ちなみに、厚生年金の保険料は、毎年4月~6月に支払われる給与をベースに計算した金額とボーナスに対して共通の保険料率を掛けて算出されます。
雇用保険
労働者が失業した時にその生活を守り、早く再就職できるように援助したり、定年後の再雇用、 育児・介護による休業などで賃金が低くなってしまった人を援助することを目的とした国が運営する保険です。
一部例外はありますが、以下の条件を満たす場合、強制的に被保険者
- 雇用保険が適用されている事業者で働いていること
- 勤務開始時から最低31日間以上働く見込みがあること
- 1週間あたり20時間以上働いていること
年末調整
給与所得者が一年間で支払った所得税等を各種控除など含めて再計算を行い、過不足の精算を行う制度です。(所得税を確定させる仕組みでもあります)
所得税は毎月の給与や賞与から天引き(源泉徴収)される時に概算で計算されています。その概算で計算された所得税を年末調整を行うことによって確定させます。当年の1月1日から12月31日までの収入を対象に所得税を合計し、控除などを確認、所得税の過不足を計算します。計算した結果に応じて、差額の還元や通以下徴収がなされます。
年末調整の対象
給与を支払われているすべての従業員、正社員やアルバイト・パートは基本的には対象となります。下記、一部の場合は対象外になります。
- 給与所得額が2,000万円を超えている場合
- 災害被害を受け、災害減免法によって、所得税の徴収猶予や還付をすでに受けている場合
- 2カ所以上で収入源(副業など)がある場合(年末調整+確定申告が必要)
- 会社経営者・個人事業主
- 日雇い労働者
年末調整を年の途中で行う場合
以下のような場合は、年の途中であったとしてもそのタイミングで会社が年末調整を行います。
- 海外転勤などで日本国内に住所がなく、非居住者になった場合
- 死亡によって退職となった場合
- 著しい心身障害のため退職し、再就職の見込みがない場合
- 12月に支払われる給与などの支払いを受けたあとで退職した場合
- 年内に受け取る給与の総額が103万円以下で退職した場合
年末調整の全体像
従業員が会社に提出した年末調整書類を基に事業者(会社)が代行して各自治体に必要な手続きを実施します。
事業所は、会社全体の給与情報や各従業員の年収情報などの必要な情報を「税務署」や「各自治体」にそれぞれ通知します。自治体では、受け取った各従業員の年収情報を基に住民税を計算して事業者に通知します。その結果を通知するのが翌年の5月~6月頃になります。そのため、住民票は毎年1年遅れて徴収されているのです。
まとめ
面倒に感じる年末調整ですが、従業員それぞれの1年間の状況に合わせて税金を調整する重要な手続きです。
還付金を得られる可能性もおおいにあるため、少しずつでもいいので内容を理解して知見を蓄積していきましょう。年末調整の全体像を把握しておくことも大切です。
扶養控除や保険料控除など控除できる料金は他にもいろいろありますが、まずは「源泉徴収」と「年末調整」がどのようなものかを理解するところから始めてみてはいかがでしょうか。